裕子の小説置場☆

千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……

第575話

6月30

砂ぼこりの向こう側に、丸い人影が見える。
「あ、あぶないところだったわ!」
その人影から発せらた声は、ほかでもない、大家さんのものだった。

第574話

6月29

ところどころ痛む右腕をさすりながら、ゆっくり立ち上がろうとする私――
ドーーーーン!
こんどは目の前で、大きな音とともに、砂ぼこりが舞い上がった。

第573話

6月29

一瞬のできごとに、なにが起きたのか、すぐには理解できなかった。
尻餅をついた姿勢のまま、呆然とする私のまわりには、倒れた自転車が散乱していた。
――なにやら大きな物体にぶつかられて吹き飛び、そのまま自転車置場に突っ込んだらしい。

第572話

6月29

私の両足は宙に浮き、身体は右斜めに傾いたまま、いきおいよく吹き飛ばされた。
またすぐ、全身に衝撃を覚えた。
先ほどとは違い、ところどころ、鈍い痛みが走る。

第571話

6月29

ドアノブに手をかけ、手前にひねろうとした刹那――
「あぶない!」
どこからともなく、大家さんの叫び声が聞こえたかと思うと、同時に私は、全身に激しい衝撃を受けた。

第570話

6月28

軽い駆け足で息を整えながら、アパートに向かう。
玄関を抜け、アパートの一階、一番奥の自分の部屋の前に着くと、倒れたドアはすでに元通りに備え付けられていた。
大家さん、どうもありがとう――

第569話

6月27

コーチ! あなたが露店で買った、その右手首にしているライマ、どう見てもバッタもんですよ!――
――気が付けば、アパートの玄関を、数十メートルも通り過ぎていた。
ついつい、イメージトレーニングにのめり込んでしまうのが、私の悪いクセだ。

第568話

6月27

勝利は目前――
この大会が終わったら――こんどこそ――どうしても言えなかった、あの言葉を――
こんどこそ! コーチに告げるんだ!

第567話

6月27

コーチ、ごめんなさい!
あまりのトレーニングのきつさに、私、なんどコーチのことを、うしろから蹴り飛ばそうと思ったことか――
けど、あの地獄のトレーニングのおかげで、今や私の前には誰の姿も見えない。

第566話

6月27

ももを高く上げ、手のひらは指先までしっかり伸ばし、交互に大きく振る。
一着でゴールを迎えたあとの、観客席から沸き起こる歓声と、駆け寄るコーチとの熱い抱擁をイメージしながら、スピードを増していく。
たしかにコーチの指導は厳しかったわ――けど、それも、今日の勝利を掴み取るためには、決して避けて通ることのできない道だったのよ!

第565話

6月27

アパートまでもう少し。
どうやらまだ、さくら姉さんの包囲網は、張られていなかったみたいね。
念には念を入れ、ギャロップから全力疾走に切り替えた。

第564話

6月26

私はそのままギャロップで住宅街を駆け抜け、自宅アパートのある通りまで、たどり着いた。
遠くに見えるアパートの玄関先に、大家さんの姿はなかった。
忽然と消えた、大村崑が描かれたオロナミンCの看板――大家さんは、なにか手がかりを掴めたのかしら。

第563話

6月25

一呼吸置いて、彼女は電話に出た。
私はみるみる彼女から遠ざかっていく。
「はい……さ………………うん…………かった……匂……おしえ……」
それ以上は、聞きとれなくなった――

第562話

6月25

背中越しに彼女の声が聞こえた。
「またね、わたしはカオリ。 あなたとは、なんだか、また会える気がする……」
と、彼女の持ち物だろう、携帯電話の呼び出し音が鳴り響いた。

第561話

6月25

公園の出口まで来た。
「じゃ、ここで」
私は、そっけなく彼女に告げ、そのままギャロップで道に出た。

第560話

6月24

あら、残念でした。
この人、匂いには敏感みたいだけど、占いはそんなに得意でもないみたい。
だって、私の探しものは、浦安に住む大ネズミだけだもの――

第559話

6月24

すると、彼女はまた、私のほうを向いて鼻を動かした。
「さいごにアドバイス」
彼女は私の目をじっと見据えて言った。
「あなたの探しものは、ふたつ……。 ひとつはすぐに見つかるわ。 もうひとつは……そうね、ひとつめ次第ね……」

第558話

6月24

「あら、そうなの……、じゃあ、ここでお別れ、ね」
彼女は、少し寂しそうに言った。
助かった。
これ以上、ついてくる気はないようだ。

第557話

6月23

公園の出口が近づいてきた。
さっさとこの人と、おさらばしたい。
私は彼女に向かって言った。
「あの、私、このまま公園から出ちゃうつもりだけど……」

第556話

6月23

彼女は続けた。
「でも、あなたからは、血のにおいがしないもの……。 きっと、人を驚かすための、おもちゃなのね……」
き、気味が悪いわ。
どうして匂いだけでそこまで――

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