裕子の小説置場☆

千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……

第892話

10月31

であれば、明日はひとまず新宿さえ抜ければ、安全度は高まる。
あ、そうだ、よく考えたら、もうリュックサックが無いんだった。
なにか代わりになるもの――

第891話

10月31

カオリたちは、もう私を追うことを諦めたかしら。
それとも、あの手紙にだまされて、やみくもに西に向かったかしら。
たぶんピーナッ子たちは、私が新宿から先には進めない体質だと、思い込んでいるはず。

第890話

10月31

タオルで顔を拭い、部屋着に着替えた。
リビングの窓を開け、空気を入れ替えると、ベッドの上に転がった。
さて、明日あらためて、浦安を目指すわけだけど――

第889話

10月30

そんなことをぼんやり考えながら、家路に着いた。
玄関のドアを開け、かぶっていたコンビニ袋を脱ぐと、丸めてゴミ箱に放り込む。
洗面所に入り、顔を洗う。

第888話

10月29

気がつくと、いつのまにか競歩をやめ、ゆっくりとした歩調になっていた。
わからない――私が本当にやりたいこと――すぐに答えは出ないと思う。
ただ、今は目の前の目標を達成したいだけ。

第887話

10月29

今は、そう――巨大ネズミに会いたい――
それが願いであり目標。
けど、じゃあ、それを達成できたら、その後は?

第886話

10月29

もちろん、なんにしたって努力なしに、最初から得意だった人なんていないと思う。
けど、考えてみたら私、努力以前に、そもそも一生をかけてやり通したいと思うほど熱中したことって、これまでなにかにあったかしら。

第885話

10月28

ほかに――なにかできることって――
アクションゲームは好きだけど、得意でもないし。
運動神経抜群でもなければ、頭だってそんなにいいわけじゃない。

第884話

10月28

一連のダンスの中で、アクセントとしてのムーンウォーク。
最初から最後までムーンウォークだけで舞台を歩き回ったって、それじゃあ、ぜんぜん芸術的じゃないもの。
結局、ムーンウォークしかできない私は、せいぜい忘年会の余興で披露するくらいしかないわ。

第883話

10月28

思えば、私の得意なことってなんだろう。
これだけはぜったい誰にも負けない、そんなものってあるかしら。
たしかにムーンウォークは得意だけど、それだけができてもだめなんだと思う。

第882話

10月27

歩を進めながら、幾度となく去来する不安感。
もし道中、偶然にも競歩選手に出くわしたら、どうしよう――
こんな自己流で、にわか仕立てのフォームを見られでもしたら――

第881話

10月27

とにかく、立ち止まっているわけにもいかない。
私は自分なりの競歩で自宅に向かった。
そう、だれと競うのでもない、これは自分自身との戦いなのだ。

第880話

10月27

けど、競歩ってどういう歩き方なのかしら?
たんに早足ってわけじゃないと思うんだけど。
たしか、必ず片足は地面に着いていないといけない、とかじゃなかったっけ?

第879話

10月27

公園から公道に出た。
ギャロップならスピードも出るし、早く帰れる。
だが、いくらコンビニ袋をかぶっているとはいえ、もしカオリと鉢合わせて、私だと勘付かれてはまずい。
ここは我慢して、競歩で帰ることにした。

第878話

10月26

ポケットから丸まったコンビニ袋を取り出すと、念のため、もう一度かぶった。
じんわりと汗で湿っていて気持ち悪い。
家に着いたら、すぐに顔を洗おう。

第877話

10月26

包丁はあきらめて、木から離れた。
公園の出口に向かう。
まだ、カオリたちがこの近くにいるかもしれない。

第876話

10月26

だめだ、びくともしない。
力を抜き、包丁の柄から手を離した。
どっちにしろリュックサックは、片方の肩ベルトが破れ、包丁を突き立てられて穴が空き、使い物にならない。

第875話

10月24

柄を両手で握り、幹に片足を当てて突っ張るように力を込める。
ふぬぬぬぬぅ――
頭に血が上り、顔が紅潮していくのを感じた。

第874話

10月24

!――
びくともしない。
あの馬鹿力、どこまで食い込んでるの!?

第873話

10月24

この包丁、古道具屋に持って行けば、ちょっとはお金になるかしら?
もし買い取ってもらえなくても、自分で使えばいいし。
私は出刃包丁の柄を握り、引き抜こうとした。

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