裕子の小説置場☆

千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……

第1087話

6月30

「お客様……、お客様?」
ふいに背後から声をかけられ、我に返った。
振り向くと、白髪の目立つ小太りの男が立っている。

第1086話

6月30

あとは、実際に味見してみてから決めよう。
安物にしろ高級品にしろ、味さえ良ければ、長芋が食べなくても私が食べればいいんだから――

第1085話

6月30

いっぽう、小袋を買った場合は――
大袋よりも高級なだけに、長芋が気に入ってくれる確率も高まる。
それに万一気に入らなくても、無駄になる量が少なくて済むし。

第1084話

6月30

さて、店長が来るまでのあいだ、ここはひとつ論理的に考えてみよう。
まず、大袋を買った場合――
もし長芋が気に入らなかったら、大量のドッグフードが無駄になるわ。

第1083話

6月30

思えば、こうしてじっくり成分表を見るのは初めてだ。

あら、ドッグフードって肉類、穀類、野菜類とけっこういろいろ入ってるのね。
じゃあ、長芋が野菜好きだからって、そんなに驚くこともないのか。

第1082話

6月30

どうやら店長を呼んできてくれるようだ。
でも、ひとこと、少々お待ちください、くらい言えばいいのに。
私はドッグフードのパッケージに手を伸ばし、それぞれの裏面に記載された成分表を見比べながら、どちらを買うか思案した。

第1081話

6月30

彼女は口を半開きにし、なにかモゴモゴとつぶやいていたが、額に浮き出た汗を両手で交互にぬぐうと、私に背を向け駆け出した。
「て、てて、店長ぉーー!!」

第1080話

6月29

「え? ワンちゃんが、ですか?」
彼女は私のまわりに犬でもいるのかと、探すような目つきで言った。
「いや、私が」

第1079話

6月29

「え? 試食? あ、試供品ですか?」
店員はとまどったように答えた。
「じゃなくて、今すぐここで食べ比べしたいんですけど」

第1078話

6月29

どこかに試食コーナーでもないかしら。

私は、たまたま近くを通りかかった若い女性店員に声を掛けた。
「あの、すみません、ドッグフードの試食ってできます?」

第1077話

6月29

さて、どちらにしたものか――

値段は両方ともさほど変らない。
長芋には、安物でよければ、と言ったものの、彼にだって好みはあるだろうし。

第1076話

6月29

つぎに、ドッグフードを探した。
雑貨コーナーの片隅に、猫や小鳥や金魚などのエサといっしょに並んでいた。
ドッグフードは、“お得用” と赤字で書かれたラベルの目立つ大袋と、グレーで毛むくじゃらの賢そうな洋犬の写真が載っている、いかにも高級そうな小振りのパッケージの2種類。

第1075話

6月29

店に入り、買い物カゴを手に取った。
野菜コーナーに行くと、20cmほどの長さに切られ、ラップに包まれた長芋が数本置かれていた。
その中でいちばん太いものを選び、カゴに入れる。

第1074話

6月29

この子は、長芋に限らず、野菜全般が好きなのかしら――
でも、せっかくだから、今日は長芋を買ってあげよう。
たぶん、店内にあるはず――

第1073話

6月29

すると、長芋は繋がれたリードいっぱいに前へと伸び上がり、後ろ脚で立つと、店先に並べられた野菜ケースの中を、片っ端から覗き込んだ。

第1072話

6月28

そんなことを考えているうちに、コンビニに着いた。

店の前のガードレールに長芋を繋ぐ。
「すぐ戻るから、待っててね」

第1071話

6月28

肉食動物だから、あまり繊維質のものをあげちゃいけないんじゃないの?
それと、やっぱり茹でたほうがいいのかな。
でも、生でおろして食べるのが、いちばんおいしいわよねぇ――

第1070話

6月28

向かう先は昼間に行った、コンビニ兼八百屋だ。
あそこなら、長芋も売ってるし。
けど、ほんとに犬に長芋なんか食べさせて大丈夫なのかしら?

第1069話

6月28

長芋の首輪をつかみ、玄関に引き戻す。
「しょうがないなぁ。 じゃあ、いっしょに行く?」
私は長芋の首輪にリードを繋げた。

第1068話

6月28

だが、長芋はついてこようとする。
「だめよ、またあとで足の裏拭くの、めんどうなんだから」
少し開けたドアの隙間から、外へと飛び出そうとする長芋。

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