第31話

助手席側の窓が降り、中年男性の運転手と目が合った。
「俺はお前の母親にはなれない。 だが、世界の果てまでも、お望みの場所に運んでやる」
後部座席のドアが開いた。
私は黙って乗り込んだ。

第30話

キキッ!
目の前でタクシーが急停車した。
思い出に浸っていた私は、現実に引き戻された。
もしかして母が色黒なのは、ひとより多く、マクドナルドのアイスコーヒーを飲んでいるせいかもしれない。

第29話

ウエストポーチは無言だった。
それでも私には、母の声が聞こえたような気がした。
「マクドナルドのアイスコーヒーって、氷抜きで頼んだほうが、まるまる注いでくれるからトクなのよ」

第28話

私は寂しさを紛らわすため、よくホットカーペットに座っては、傍らのウエストポーチに頭を押し付けて、つぶやいたものだった。
「おかあさんって呼んでもいいですか?」

第27話

私の母は色黒で、まるで、ホットカーペットの上に無造作に置かれたウエストポーチのような人だった。
一人暮らしをするようになってから、母のことを思い出さない日はない。

第25話

数分後、遠くにタクシーの姿が見えた。
こんどこそは・・・・・・
私は大きく手を振りながら、さっき以上の大声で叫んだ。
「それでも! それでも、あなたをおかあさんと想い慕ってもいいですか!?」

第24話

予想はしていたが、運転手の答えに私は打ちひしがれた。
だめ・・・・・・なの・・・・・・?
気を取り直して、次のタクシーを待つことにした。

第23話

タクシーは速度を落とすことなく、私に近づいてくる。
目の前を通り過ぎる瞬間、開いた窓から運転手が答えた。
「だめだ!」

第22話

逆立ちを止め、擦りむいた手を舐めながら、こちらに向かってくるタクシーに向かって声を張り上げた。
「あなたのことを、おかあさんと呼んでもいいですか!?」

第21話

せっかくなので、逆立ちしたまま、手でムーンウォークに挑戦。
手の裏を擦りむいた。
やめた。

第20話

なぜ逆立ちをしたかというと、ムーンウォークのし過ぎで、脚が疲れたからだ。

第19話

ヘイ! タクシー!
私はその場で逆立ちし、目の前を通り過ぎるタクシーに向かって、脚をばたつかせた。
しかし、一台も止まろうとしない。

第18話

駅に着いた。
新しいふりかけを買っていない。
タクシーをつかまえて、さきほどのコンビニに戻ることにした。

第17話

ふりかけの味に飽きたので、違う味のふりかけを買うことにした。
次のコンビニはどこかしら?

第16話

コンビニに寄って、ふりかけを買った。
手のひらに出しては舐めながら、ひたすら駅に向かってムーンウォーク。

第14話

柔らかいものを踏んだ。
気にしない。
ムーンウォークで地面になすりつけながら歩く。

第13話

ふたたびムーンウォークで駅に向かった。
暗さのせいか、周りがよく見えない。

千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……